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地震とシロアリと腐朽について。 [地震]


皆さん、こんにちは。

新潟県人である私はこれまで大きな地震を3回経験しました。 
中学生の頃に一度、そして近年は二度です。 幸い自宅が倒壊と
いう被害にはならなかったのですが、幸運だったと思います。 

そして、私の経験からしかいえませんが地震についての私の感想を
書いてみたいと思います。 かなり主観的な内容になりますがそこは
大目にみてくださいね。

まず中学生の頃の経験。 ちょうど数学の授業中でした。 
グラッときたとき先生の指示で一斉に机の下に潜りました。 
しかし数十秒後に再び今度はもっと大きな揺れが・・・・さすがに机の
下だけでは危険だというので今度はみんなで窓から外へ飛び出しました。 
外はすぐ裏山になっていましたのでみんなで山へ避難。 
可愛そうに窓側の席の机の教科書はみんなの足に踏まれてぼろぼろ。

家へ帰る途中に新潟市内の方向を見ると真っ黒なけむりが空高く・・・
なんとも複雑というか不安というか・・・もっと正確にそのときの感情を
思い起こしてみると・・・不快感だったと思います。 
不愉快だったのです。 何が? 
地面が揺れる、ということが、です。 

文明なんてどんなに発達しても、どんなに科学技術が進んでも、
どんな芸術でも・・・とにかく人間の今まで積み上げてきた全ての営為でも
「地面が揺れる」というそれだけで一挙に無価値に思えて・・・
というか思い知らされたというか、とにかく私はすごく不愉快でした。 
その不快さの感情だけは覚えています。 

それは低い床下で作業中に出てこれなくなったときの一種のパニック的な
不快さに似ているようです。 圧倒的な力の前で自分の無力さを徹底的に
思い知らされるというか、自然の圧倒的な力にレイプされるというか、
それでもどうにも出来ない不快感というか・・・
とにかく不快、不愉快な感情です。

ああ、いきなり脱線しまくりですね。 住宅と地震について書くつもりだった
のに。 
たとえば地震の後で、大手ハウスメーカーが「在来工法の家はほとんど
倒壊しても当社の住宅は地震にも関わらず大丈夫でした。」と宣伝していた
のを見たことがあります。 
そのとき私はこれはフェアじゃないなあと思いました。

勿論、大手ハウスメーカーだからそれなりに耐震研究の上に設計施工
したのでしょう。 しかし、数の上では圧倒的に在来工法、それも古い
在来工法の家と、とても少なくてしかも新しい家では勝負にならない
のが当然です。 もし、その辺一体がそのハウスメーカーの、しかも古い
年数の住宅だったらどうでしょうか? 

それから私自身、地震で思い知らされたことは「どんなに家自体が頑丈に
作られていても地面が傾けば無意味」だということです。 
だって躯体が無傷でも傾いた家には住めませんからね。 
私の街の山際に温泉街がありますが、これらの人は地震には自信を
もっているようです。 理由は地盤が岩盤だからです。 たしかに岩盤の
うえの住宅は被害がまったくといってよいほどないのです。

数年前に「耐震工事がこれから大きなビジネスになるから今がチャンス」的な
DMを貰ったことがあります。 資料請求していろいろ調べましたが、結局私は
「耐震工事」をする気にはなれませんでした。 
たしかにビジネスチャンスなんでしょう。 

しかし、いくら住宅そのものの耐震性能を向上させても同時に地盤を
なんとかしない限り片手落ちの気がしてならなかったからです。 
これは私の偏見かもしれません。 それでも何もしないよりは耐震工事は
した方がいいという考え方もあるからです。

それから3年前の地震のとき、私のお客様からずいぶん「瓦屋根は重い
からもっと軽い素材に変えたほうがいいかしら?」という相談を受けました。 
それに対して私は、確かに耐震性を考えたら「軽い屋根」のほうがいいかも
しれない。 でも、「耐久性」を考えたらどうなんだろう?と思いました。 

新しい素材の屋根がいろいろ販売されているようですが「耐久性」に
ついては未知数のように思えます。 それに瓦屋根の被害の状況をみて
みるとどうも屋根の中央部分(グシ?というんですか)は確かにズレたり
破壊されている部分は多いようですが、それ以外は無傷の屋根が多い
ように見受けられたからです。
(これについては、たいせい様の最新のブログに詳しく説明がされていて、
やっぱりと思いました。 興味のある方はぜひご一読を。下記のブログです。 
私はとても参考になりました。)

http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei

雪の積もる新潟県では「軽い屋根」はもつのかなあ?という疑問もありました。 
昔、大工さんに関東の屋根は軽くてもいいが雪国は無理という話を聞いた
ことがあります。 これについては私は判断できませんが。 

また今度は「床下から」考えてみると・・・土台がシロアリや腐朽で弱っている
のを見ると、もしここに大きな「外力」が加わったら危ないなあ、と思わせられる
住宅はけっこう多いような気がします。 
とくに土台と基礎を連結させるアンカーボルトが緩んでグサグサになっている
家は珍しくないのです。 これは土台が「痩せる=収縮」ためだと大工さんは
いいますが。 アンカーボルト自体が錆びてボロボロの家もあります。 

また、在来工法は決して地震に弱いとはいえないという大工さんもいます。 
昔の床下が「吹き抜け」で基礎のない家は束石がちょうど「漬物石」みたいに
楕円形をしていました。 この漬物石のような束石が地震の力を吸収して
いるんだ、ということらしいです。 

(ついでにこの漬物石のような束石が、一種の「シロアリ返し」の役目も果たして
いるように私には思えます。 昔の人がそこまで計算していたのかは不明ですが。 
つまり、シロアリが地中から束石に蟻道をつくって登ってくるときにシロアリに
とっては仰向けにならざるを得ないわけで、そのポーズは他の昆虫からは
無防備にちかく危険な態勢だからです。)

つまり、「基礎にアンカーボルトをつなげてガッチリさせる」のとは正反対の
考え方です。 束石が揺れる→土台も揺れる→家も全体が揺れる、
そうして「地震の外力を吸収する柔構造」とでもいったらいいのでしょうか? 
五重塔なんかと似た考え方みたいですが、どうなんでしょう? 
そのほうの専門家の意見をお聞きしたいものです。 

だいぶ話が漠然としてまとまりがなくなってしまったようです。 
シロアリ屋としては、やっぱり家の「足回り」である土台がシロアリと腐朽で
弱くなることは、地震に対してはかなり危険という印象をもっています。 
数値的な実証はできませんが、できるだけ「風通し」を良くして「シロアリ」と
「腐朽」から土台を守るという意識は必要だと思います。 
地震対策のうえからだけではなく、それは家の耐久性を向上させるうえでも
大きなポイントだと思います。 

すっかり個人的な「印象」ばかりの内容になってしまいました。 
あまり皆さんの参考にはならなかったかもしれませんね。 
逆に皆さんの経験などを教えていただきたいと思っています。

それでは皆さん、ごきげんよう。


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たいせい

 私の拙いBLOGをご紹介下さり、本当にありがとうございました。

 業界の古い方に、「筋交いなどをあまり使わず、柱そのものと継ぎ手で出来ているのが本当の日本建築だ」とうかがったことがあります。
 地震などでゆれた場合、toyoさんの仰るように束石と柱でゆれを逃し、それでもゆれる場合は葺き土と一緒に瓦を落とし、土壁を落とす。
 仮に構造が歪んだとしても、引き屋で真っ直ぐにして、屋根を葺いて壁を付け直せば修理が出来る。
 そんな知恵を持ったのが本来の日本建築だ、といった趣旨だと記憶しています。

 やや穿った見方なのかもしれませんが、日本建築という観点で見れば、現在の工法はその延長線上にではなくて、むしろ掘っ立て小屋やバラックをどう補強するか?立派に見せるのか?と言う観点で、進んでいるように思います。
 だから、数百年単位での自然との闘いを通して歴史的な検証をへて成立した「匠(職人)の知恵」が失われ、数十年単位での検証を経ずに新しい工法が実施され様々な問題を生んでいるように思えてしまうことがあります。
(屋根についてもそう思えるような事例がありますし、記事で紹介いただいた、束石と柱とシロアリの関連も、その手の実例のように感じました)

 意味不明な雑談になってしまい申し訳ありません。
 今後ともよろしくお願いいたします!
by たいせい (2007-08-25 08:59) 

toyo

たいせい様
コメントありがとうございます。以下のたいせい様のコメントについて、実は私も以前からそう思っていました。まったく同感です。匠の知恵にもっともっと学ぶべきではないかと思います。せっかくの「宝の山」の技術と思想がそこにあるのにもったいないという気がします。亡き西岡翁の考え方などすごいと思うことしきりですものね。

「日本建築という観点で見れば、現在の工法はその延長線上にではなくて、むしろ掘っ立て小屋やバラックをどう補強するか?立派に見せるのか?と言う観点で、進んでいるように思います。
 だから、数百年単位での自然との闘いを通して歴史的な検証をへて成立した「匠(職人)の知恵」が失われ、数十年単位での検証を経ずに新しい工法が実施され様々な問題を生んでいるように思えてしまうことがあります。」
by toyo (2007-08-25 09:15) 

山梨の渡辺

こんばんは
私は建築のことはまったく 素人 なのですが、
法隆寺を訪れ五重塔の前にたたずんでいたときに
「木材は、生えていたときと同じ東西南北になるように使ってあるんですよ」
と説明を受けたことがあります

耐震とは関係は不明ですが
「生えていたときと同じ向きのまま柱を使う」という宮大工の知恵には、
木材に対する礼儀の心を感ずるとともに、
自然に対する礼儀 謙虚さ も感じました

おそらく彼らは強度を測って、「この数字がこうだからあとこのくらい・・」
などと計算して向きをあわせたのではないと思います

木は生えていた向きのまま使えば長持ちする

これは考えてみれば当たり前のことであると同時に、
一番大切なのは 「そうして使えば建物がなんとなく落ち着く」
・・・この、理屈ではない 「なんとなく・・」 だと思うのです

話が脱線してしまいますが  笑

人間の脳はおおまかにいえば脳幹(爬虫類の脳) 旧皮質(哺乳類の脳)
新皮質(人間の脳)からできています

トカゲや蛇などは基本的には脳幹しか持たず、食べ、排泄し、子孫を残し、
自己防衛しています  犬、猫などはこの上に旧皮質を重ねた脳で暮らしていますから、トカゲや蛇よりも賢いし、喜怒哀楽の表現も豊かです
人間はさらにその上に新皮質で覆われた脳を持っており、言語や知性、その他の抽象観念をつかさどっています
社会全体の仕組みや経済システムなどは、この 新皮質 の上に成り立っていますので、どうしてもこの 新皮質 ばかりを使って生活することを強いられるのが現在の世の中です 

しかし、あくまで3つの脳を持っているのが人間であって、新皮質ばかり使っているとバランスが崩れ、のこりの2つの脳が不満を訴え始めます これが今多い、「自律神経失調症」の原因になったりするわけです

「自律神経失調症」の治療方法として、「言語を使わせない」というのがありますが、新皮質が休むことによって旧皮質や脳幹がうごきだすことと無関係ではないはずです


こと自然に対して物を考えるときに、新皮質 的な考えは はあまり役に立たないことが多いのは、天気予報や地震予報を見ていればお分かりいただけると思います 自然は人間が登場するはるか前から存在しているのですから、植物、虫、爬虫類など新皮質を持たない生物たちの対応こそ手本としなければなりません

「自然に対し謙虚であること」 これはおそらく、新皮質の活動ではない気がしています  宮大工さんたちの「なんとなく・・・」これも動物的な カン であって、現在の建築工学、新皮質の理屈とは遠い気がします

スポーツや囲碁 将棋 絵画 書 など、各分野においても第一人者に共通するのは 「動物的なカンが鋭いこと」 と聞いたことがあります 
これも、新皮質だけでは説明のつかないことだと思います

法隆寺建立の際、聖徳太子は数ある土地のなから斑鳩の地を選びました。そしてその土地選別の眼力は、1300年たった今成功であったといえると思います 前述の 岩盤 の話にかぶりますが、太子が測定機を使い地盤調査したとは考えられません  その土地の上に立ち、「ここなら気が安定している」 これこそ現在の人間が失ってしまったものであり、「動物的」
といえるかもしれません

へたくそな長文章 失礼しました 笑ってお許しください 
by 山梨の渡辺 (2007-08-25 23:48) 

toyo

渡辺 様

ビックリしました。大変な博識ですね。しかも、難しいことはわからない私にもとてもうなずけることばかりです。私の家内の亡き父上もちょっと変わった大工でしたが、木材についてはほとんど渡辺様と同じ事を言っていました。今は「木を見る」ことのできる大工さんはほとんど絶滅したようだとも言っていました。
それから土地についても、ほんとにごもっともだと思います。実は私が炭にこだわるのはそれとも関係があります。旧皮質が鈍感になった私達には「土地の良し悪し」がわかりません。それに、もし、わかったとしても予算とのかねあいもあって、好きな土地を手に入れることも難しくなってきています。それなら悪い土地を良くすればいいのでは・・つまり、ケガレチをイヤシロチにすればいいと思っています。その簡単な方法が敷炭です。
土地が人を殺す、というと物騒ですがそれはあり得ることだと思っています。そしてそれはどうも「土地の磁場」と密接な関係がありそうです。
私の近くにも先祖代々病気がちの家系の家があります。その原因として「先祖の祟り・因縁」だとか「家相・方位」だとか取り沙汰されていますが、私は土地の磁場が健康を害してる気がします。身体から電子を取られる土地と、その逆の土地の差です。これらは最近計測可能になってきているようです。これ以上書くとオカルトっぽく思われそうなので止めますが、それにまだ私自身絶対の確信があるわけでもないのですが。

いやー。でも最近いただくコメントは私にとって高度な内容ばかりで、自分の無知さ加減が暴露されるようで恥ずかしいです。察するに、渡辺様の周囲の環境はとても恵まれているような気がします。興味深いお話、ほんとに参考になります。ありがとうございました。
by toyo (2007-08-26 02:30) 

こう

法隆寺の五重塔が建っている地盤は大変軟弱だそうです。
なぜ千年以上も建っているのでしょうか?

その秘密は地盤改良にあったそうです。
まず、建設地の軟弱な土砂を掘り出して、砕石を入れ、十分に締め固めています。そして、基礎に大きな岩を使っています。

また、材木は立方体に切り出さずに、割って使用している場合が多かったようです。無理に整形していないので、変形しないそうです。

 飛鳥時代が一番技術が高かったのでしょうか?
 技術よりも思想が大切な気がしてきました。
by こう (2007-08-31 00:02) 

toyo

こう様

そうなんですか。とても勉強になります。

>技術よりも思想が大切な気がしてきました。

ほんとにそうかもしれないですね。世界的に有名な外国の建築家などは皆「思想」をもって家づくりをしているような気がします。TVと新聞でみたことがありますが、ドイツのマイスターなど数年間、ドイツ各地を飛び込みで大工の武者修行するらしいですね。やっぱり「ほんとに大事なこと」は「口伝え」でしか伝わらないのかなあ、なんて思います。コメントありがとうございました。
by toyo (2007-09-02 13:24) 

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