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基礎を切るのはそんなに悪いことなのか? [シロアリ]


皆さん、こんにちは。

実は同業者が、最近発売された某月刊雑誌(といっても地方紙ですが)に、
「シロアリ工事の際、業者が基礎を切ることについて強烈な非難めいた記事」
が載っているよと教えてくれました。

早速、書店に行って、その雑誌の記事を読んでみました。 
その月刊誌は主に県内の談合とか政財界の裏の事情を暴露する
スキャンダル誌です。 
かっての「噂の真相」地方版とでも言ったらいいでしょうか? 「噂の真相」は
廃刊になりましたが私も読者でした。 「噂の真相」も内容はかなり偏向した
記事が多かったように思いますがそれなりに面白かったように思います。

しかし、この月刊誌は(たまに読んだことがありますが)その「偏向の程度」が
極端な気がしていました。 それにニュースの取材源が結構いい加減だな、
という印象を前から感じていたので読者になるほどではありませんでした。 
大体「正義の味方」を声高に叫ぶ人を私は信用しないことにしています。 

で、その記事の内容を要約すると、シロアリ業者がシロアリ駆除の際に
中基礎をハツる(切る)のは耐震性の強度を落とすから、けしからん!
ということがまるで鬼の首を取ったような勢いで書かれていました。 
その写真も紹介していました。 これはシロアリ業者のとんでもない無謀な
悪行と断罪しています。

で、反論でもないですがこれについて書いてみます。 
事情を全く知らない一般の人がこの記事を読んで間に受けてもらっては困る
からです。 まず「基礎を切る」ことはいいことか悪いことか、といえば悪いこと
に決まっています。 
たしかに耐震性は落ちるでしょう。単純に私もそう思います。
 
しかし、シロアリ業者が好んでそうしていると思われると困るのです。 
実際、狭い床下で、しかも横になって窮屈で無理な体勢のままに基礎を
切るという作業がどんなにしんどい大変な作業であることか御理解いた
だきたいのです。

(たとえば自衛隊で「匍匐前身」という、重い銃器を両手でもったまま地を
這う訓練があります。 そのスタイルとよく似ています。
それにハツリ機もけっこう重いので、その重い機器を当該箇所に運ぶだけ
でも相当疲れます。) 
できれば、そんなしんどい思いなどせずに駆除できればいいなあ、といつも
思います。

でもシロアリを駆除するためには、当該箇所に「なにが何でもたどり着か
ないことにはシロアリを駆除することはできない」
のです。 
「発砲施工」とか床下に潜らなくても通気口から薬剤を泡状にして吹き込む
方法もあります。 

私もそのほうが圧倒的に楽なので採用しようかと思ったことがあります。
でも結局、採用しませんでした。 
理由は、予防ならともかく駆除では明らかに発砲施工では無理があるから
です。 

それはシロアリが木の内部にいるからですね。 木の表面にいくら泡状の
薬剤を付着させても、内部のシロアリにはなんら影響を与えることができない
からです。 

というわけで、原始的ですが駆除の場合は「なにが何でも当該箇所に
たどり着き」
ドリルで穿孔して薬剤を注入する必要があります。
 
つまり、シロアリのいるその場所(当該箇所)にたどりつくためには障害と
なる「基礎を切る」という作業は必須なのです。 そうしなければシロアリを
徹底的に駆除することも拡大を防ぐこともできません。 
むしろ、この作業をはずすことはそれこそ「手抜き」になります。

つまり「基礎を切らないで駆除をしろ」ということは・・・・そうですね。 
例えば、お医者さんにメスを使わないで手術をしろ、というのと同じことです。 
胃ガンの手術で開腹しないで(皮膚を傷つけないで)ガンを取り出せと言っている
のと同じです。 基礎を切るということはいわば「必要悪」です。 
繰り返しますが切らずに駆除できればこんな楽なことはありません。 
決して切りたくて切っているわけではないのです。

このへんの事情をその記事を書いた記者はまったくわかっていません。 
調べればすぐにわかるはずなのですが。 調査能力がないか、あるいは
わかっていても意図的に外したのかもね。 
「ニュースの取材源が結構いい加減」と先ほど書いたのはこういう意味です。 
初めから悪者と決め付けて、それからそのために都合のいい情報だけ集めて
記事を構築するという手法は低レベルで安易な方法です。 
(もっともマスコミはこの手をよく使うので、特別なことでもありませんが。)

それはともかく、基礎を切らずに駆除できる方法があれば私も知りたいです。
脳のレーザー手術みたいなことできないかなあ、とかね。 
そうすれば狭くて、しかも危ないカビ菌がうようよいる汚い床下になんか
潜らなくてもいいのに、とつくづく思います。 
しかし、現状ではそんな方法はありません。
 
それでも近年建てられた家の床下は、基礎をわざわざ切らなくても全室に
行けるような基礎のつくりになってきているようなので助かります。
あれ!これってどういうことでしょう?「基礎をわざわざ切らなくても全室に
行けるような基礎のつくりになってきている」
ってことは初めから「基礎が
弱い」ということなのかなあ? それなら「基礎を切っても」たいして影響は
ないってことになるのでしょうか? (ちょっと皮肉ですが)

間仕切りの耐震性について知っている方がいたら、是非教えていただきたい
です。 私も調べてみますが。 耐震構造のプロの人ならわかるでしょうね。 
それからなぜ近年「基礎をわざわざ切らなくても全室に行けるような基礎の
つくりになってきている」
と思いますか? たぶん建築家か建築基準法など
つくる偉いお役人がやっと「通気の悪さがもたらす弊害」に気づきはじめたから
ではないかと思います。
 
そして、私は個人的にはこれはとてもいいことだと考えています。 
理由は基礎を切らないほうが何よりも私達も作業が楽になるし、それに床下の
通気もよくなるからです。 何度も書きましたが、家の寿命を伸ばすうえで
「床下の通気性」は決定的に重要ですからね。 

特に最近は全室フローリングで、和室の部屋が極端に減っている家が増えて
います。 これも時代の流れで仕方のないことかもしれません。 
和室の部屋が多ければ、基礎をわざわざ切らなくても畳を上げて各部屋ごとに
床下に潜って駆除もできますが、フローリングの場合はそうはいきません。 
この場合はフローリングを切るか、あるいは基礎を切るか、の二者択一の
選択になります。 

勿論、お客様の了解が頂けるのであればフローリングを切るほうが私達も
楽なので助かります。 でも、そうすると工事後に「フローリングの修復」という
馬鹿にならない費用が別途発生することになります。 
駆除代+修復リフォーム代で、倍の費用が必要になります。 
これには大抵のお客様は抵抗します。
だって、お客様からすればシロアリ駆除そのものでさえまったく「予期しない
出費」ですものね。 気持ちはわかります。  

以下の写真は基礎割・前と後の写真です。

今日はちょっと不愉快だったので荒れた文になってしまったかもしれません。 
ただ、私はシロアリ業者に対するマスコミの偏見をいい加減にしてほしいという
思いがあります。
 
どこの世界にも悪い奴はいるものです。 
警察官だって教師だって強盗殺人や犯罪を犯す時代です。 悪徳記者だって
いるでしょう。 でも、だからといって全ての警察官や教師がそうだとは誰も
思わないでしょう。地道に一生懸命がんばっている人のほうが圧倒的に多い
はずです。 シロアリ業者だってそうです。
 
マスコミは少なくとも社会の公器の面があります。 影響力が大きいのです。 
その最低限の自覚を持って記事を書いてほしいと思いますが、これは所詮ない
ものねだりでしょうか。 書きっぱなしで後で間違いがわかっても滅多に謝罪しない
のがマスコミですものね。 ぷんぷん。

それでは皆さん、ごきげんよう。 
(ぷんぷんした文でごめんなさい)   


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たいせい

 私は、瓦に対するマスコミの偏見をいい加減市にして欲しいと思っています。
 とあるマスコミの方(被災地の取材経験が豊富で専門記者とされていらっしゃる方です)に直接意見の交換をする機会があり、瓦と地震被災に関係についてやり取りをしました。
 その方が仰るには、「瓦と被災には直接的な係わりがなく、築年度の想定強度の問題や、手抜き工事、構造材の腐朽の問題の方が遙かに大きいことは、どのマスコミでもデスククラスはみんな知っている」、とのことでした。
 「では何故、現在のように瓦が重いから自信で家が壊れると一般の方が受け取られる記事になるのだ」との質問を私の方から投げかけると、理屈にも成らない戯言を繰り返す有様でした。
 結局マスコミは視聴者や購読者に喜ばれ、視聴率や購読者数を増やすことも目的に「商売」としてやっています。
 多少自分が内情を知る事象を報道を見るたびに、腹立たしいことばかりです。

 なお、前にも書かせていただきましたが、私が地震被災地を見る度に思うのは、地震被害を受ける建物の典型的特徴は、基礎や構造以前に「白アリなどでの虫害や木材の腐朽による構造材の強度低下」「手抜き工事」の二点だと考えており、その意味でも白アリを駆除するという目的のためならば、多少の基礎の改変はやむを得ないと思っています。

 既知の記事ですが、この記事を読まれる方もいらっしゃると思いますので、中越沖地震の報告書のTBをまた送らさせていただきます。
by たいせい (2007-11-10 09:37) 

toyo

今日、その出版社について知っているという人から話を伺いました。
「ああ、あそこは金さえ出せば何でも・・・というと、ちょっと言いすぎだけど・・・少なくとも広告さえ出してくれれば誹謗中傷の記事くらいは書くところだよ。」と言っていました。やっぱり!と思い納得しました。
確かに瓦が重いから地震がくるとヤバイ!と考えている人はとても多いと思います。それから御指摘の「白アリなどでの虫害や木材の腐朽による構造材の強度低下」「手抜き工事」の二点・・・というのも私も同感です。いろんな大工さんに聞いても大体同意見でした。
それにしても恥知らずのマスコミには困ります。
たびたびのコメントありがとうございます。
by toyo (2007-11-10 13:39) 

kappa

こんにちは。
はつらないと床下にたどり着けない構造の家もあるのですね。
基礎の通気性の話、参考になります。
最近は束で土台を支え、コンクリートの立ち上がりを基礎内部に余り設けない工法も見かけますが、これも通気性の確保のためでしょうか。
by kappa (2007-11-11 17:07) 

toyo

kappa 様
「はつらないと床下にたどり着けない構造の家もあるのですね。」
・・・というより、ちょっと前の住宅はほとんどがそうです。はつる必要のない家は、ほんとに数年前から、だと思いますよ。それとも新潟県だけに特徴的な傾向なんでしょうかね。
「最近は束で土台を支え、コンクリートの立ち上がりを基礎内部に余り設けない工法~」う~ん、たぶんそうだと思うんですが、正直なんともいえないですね。そうであってほしいんですが、コストとか工期の理由もあるかもしれないですね。コメントありがとうございます。ところでkappa 様の新居も完成間じかでおめでとうございます。
by toyo (2007-11-13 00:56) 

あ

いや、はつってはだめでしょ
地震が起きた時に責任がとれるのですか?
押入れ等の収納部分などの床から剥がすべきだと思います。
高いから床を剥ぐべきじゃないという考えがそもそも間違っているのではないですか?

むしろ、みえないかはといってはつってそのままにすることも納得がいきません
by (2019-11-14 20:59) 

お名前(必須)

あ様
コメントありがとうございます。
あ様のおっしゃるとおり、今ははつりはまったくしていません。だから反論するつもりもないです。

ただ(反論ではないですが)これは2007年に書いた記事なんです。当時の建物は、ほとんどが床下が中基礎で各部屋ごとに仕切られた造りが普通でした。だから当時は
基礎割りをするしか実質的な選択肢はなかったんです。

建築も、どういったらいいか?時代の流れというか流行みたいなのがあって今の建築物とは隔世の感があります。当時は「床下の通気性」などまったく考慮していない住宅物が普通でした。基礎もブロックで代用した住宅もありました。今の建築基準では考えられないことですが。

その後、建築基準法が徐々に整備されてきて現在は通気口の数や人通口の義務化、また「必ず全室の床下が調査できるように」床上に「点検口の設置」が義務化されました。(いわゆる100年住宅=長期優良住宅の場合)

だから、自然と基礎割りをする頻度も減ってきてここ10年くらい前からは電動ハンマーも使うことはなくなってきました。シロアリ屋としてはとても助かっています。

稀にそれでも基礎割りをしなければ駆除できない造りの家もありますが今はその代わりに「点検口」を設置してもらって対応しています。ついでにいえば昔は点検口の重要性もほとんど認識されていませんでした。
・・ということで御理解いただけたら嬉しいです。

10年以上前に書いた記事ですので現在の考え方をモノサシにすればおかしな記事も多々あると思います。ほんとは削除すればいいんでしょうが、あえて私の恥さらしな失敗も含めてそのまま公開することにしています。
コメント感謝します。どうか、あ様にいいことがありますように。
ありがとうございました。
新潟防虫 茂木豊彦拝

by お名前(必須) (2019-11-19 10:11) 

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