築27年・在来工法・2年の空き家・シロアリ・薪 [シロアリ]
みなさん、こんにちは。
いきなりですが、前回の記事で・・
- 住宅から1メートル以内にシロアリがいた=でも、住宅
にもシロアリが絶対、侵入しているわけではない。
・・・と、書きました。
今日はその実例です。
「裏の外壁に薪をたくさん積んであって、その薪を動かしたら
シロアリがいっぱいいた!」・・という焦った様子の電話を昨日
いただきました。
で、調査にお邪魔して撮ったのが下の写真です。
私はこの光景を見たとき、残念ながら既にシロアリは侵入して
いるかもしれない・・と、思いました。
ここにシロアリがいっぱいいたそうです。
こりゃあ、シロアリがいてもおかしくない雰囲気ですね。
写真では分かりにくいですが、蝕害(シロアリの齧った形跡)が
いっぱいありました。
で、この家は2年間、住んでいないんですって。空き家状態。
築年数は27年。 それに、この家のすぐ脇には川が流れています。
周囲の状況をみても、シロアリが好みそうな土地環境・・でした。
きっと、床下もカビ臭くて被害も進んでいるかも・・・。
ところが!・・以下はこの家の床下です。
おー!全然いい状態です。 これはびっくり。
このカンナ屑はちょっと感心しないなあ~。 でも・・。
土台、大引等まったく傷んでいないんです。 腐朽の気配すらない。
カビ臭もほとんどなし。
感じとしては築半年くらいの床下みたいに思いました。
えー!なぜなんだろう???
仔細に調査すればするほど意外な感じです。
もちろんシロアリもいませんでした。 初心にかえって隅から
隅まで調べたんですけどね。 う~ん、実に意外です。
土地環境はよくない、すぐ脇を川が流れている、外回りの
あちこちにはシロアリがいる、築27年である、おまけに2年間も
空き家状態・・でも、シロアリの被害は皆無。湿気もない。
腐朽もない。 もちろん、外壁やその他の劣化は進んでいましたが、
床下については極めて「健康的」でした。
完璧に私の予想は覆されました。
電話をいただいて状況を聞いたとき、これはけっこう厄介な
駆除になるケースかもと思って覚悟していたんです。
で、こんなに状態がいい理由を探りました。
写真には撮りませんでしたが、たぶんこういうことじゃあないかな、
と思っています。
- 床下の土壌は、決してよくはない土質でした・・
粘土質で、おまけに大小の石ころがいっぱいです。
で、その対策として、棟梁が全体に川砂を撒いていました。 - 典型的な在来工法で、壁は土壁でした。
- 一箇所から全部の床下に行けるように、あらかじめ
通気口が確保されていました。 だから、床下の通気は
とってもいい。
(そのぶん、冬は寒いと思いますが。)
たとえば玄関。 下の写真を見てくださいね。
上がり框(かまち)の下を見て下さい。黒いタイルが見えますね。
近年はここはどこの家も完全に塞がっていますよね。
でも、この家は・・
下の写真を見て下さい。
ね、隙間が作られていますね。
実際は2~3センチくらいの隙間でした。 昔の家はこれが
ふつうでした。 同時に、昔の棟梁は日本の風土を知り
尽くしていたんだなあ~、と、なんかうれしい誤算というか、
改めて在来工法の威力を目の当たりにしたような気持ちに
なりました。
で、私なりの結論は、やっぱり通気のいいのが最大の原因
じゃあないかな?と思いました。
たしかに通気がいいと寒いし、ねずみが入りやすい・・とか
欠点はいろいろありますが、その欠点を補っても余りある良い
面があると私は思うんですが、どうかしら?
ということで、私にとっては駆除の仕事が入らなくて残念(笑)
・・でも、お客様にとっては、ほんとに良かったですね。
お客様(某会社の社長夫妻)も喜んでいました。
ただ、今日の記事でこうは思わないでくださいね。
なんだあ~、家の周りに薪を積んでおいても心配ないんだ
なあ~・・ってね。 今日の記事は過度にシロアリを心配する
ことはないという見本ですけど、そうそうあることでもないです
からね。
今日のまとめとしては・・・
- シロアリに過度の恐怖心を抱く必要はないけど
甘く見ることも危険です。
要は、バランスをもって対処すること・・かしら。
実は、これを一番お伝えしたかったんです。
最後までお付き合いいただいて感謝します。
それではみなさん、ごきげんよう。
<ジョーク>
帰宅してから、講演のテーマがセックスだとは妻に言いづらい。
そこで、メンバーとの話題は乗馬についてだったと取り繕った。
数日後、妻はショッピングセンターでそのうちの何人かと
ばったり出会う。 彼らは口々に亭主が講演したスピーチに
賛辞を呈する。
妻;
「そうですね、聞きましたわ。でも主題については驚いたんですの。
夫はたったの2回しか乗ったことが無いんですから。
最初の時なんか、皮膚がただれてしまってほとんど歩けない状態
でしたわ。 2回目ときたら、転げ落ちちゃって。」
お久しぶりです。
うーん さすがです。勉強になります。
by わかって建築家 (2010-10-28 08:44)
油断は危険ですが、神経質になるのもどうかな… バランス感覚って一番難しいかも知れませんね^^;
by 小父蔵 (2010-10-28 23:13)
技術は進歩すべきですが、どうもそうじゃないらしいですね。
でも、商売のためにわざとだったりして・・・
あと、住宅性能の評価基準のせいもあるのでしょうか?
by こう (2010-10-29 01:52)
わかって建築家 様
おはようございます。
参考にしていただければ嬉しいです。
シロアリに対する反応って、極端な場合がとても多いんですよね。
①ものすごく怖がる人、と
②全然怖がらない人
で、①の人は悪徳業者に簡単に騙されてしまうタイプが多い。
②の人は、大被害になるまで気がつかないタイプ・・といいますか。
どっちの人もなかなか私の言うことをわかっていただけないので
こんな記事を書かせていただきました。やっぱりバランスをもって
判断することが大切だと思っています。バランスって何事についてもいえることじゃあないかな?と思っています。
わかって建築家様にいいことがありますように。
ありがとうございました。
by toyo (2010-10-29 08:35)
小父蔵 様
おはようございます。
>バランス感覚って一番難しいかも知れませんね^^;
たしかにそうですよねえ。
渦の中に巻き込まれると・・当事者になるとバランス感覚を保つ
ことって、実際は難しいシーンが多いと思います。
う~ん、難しいですね。
判断の前提となる情報そのものが間違ってる場合は尚更ですね。
シロアリについては、間違った情報が一人歩きをしている場合が
とても多い気がします。業界の責任でもあると思います。
小父蔵 様にいいことがありますように。
ありがとうございました。
by toyo (2010-10-29 08:44)
こう 様
おはようございます。
>商売のためにわざとだったりして・・・
>住宅性能の評価基準のせい・・・
あー、これは残念ですが、ある、と思います。
いや、あるんですよね~、実際(笑)
商売がうまくいかないと、人間って悪魔にもなっちゃうと思います。
そういうときほど矜持が大事だと思うんですが、難しい・・ですね。
追い込まれたときほど人間って本質が出るみたいです。
悪魔にはなりたくないですが(笑)
こう様にいいことがありますように。
ありがとうございました。
by toyo (2010-10-29 08:51)
本当に具体的に、かつ「事実」に忠実に
シロアリの生態?との関係で住宅のつくりについて
語られていて、
良心的で参考になる記事だと思います。
まとめで述べられていた「バランス感覚」の必要、
というのは本当にそうですね。
逆に言うと、そうしたバランス感覚を感じさせる業者さん
こそ信用できる、ということだと思います。
また、伝統的な家づくりの知恵、
本当に、できるだけ多くの人に広まってほしいですね。
けっこう多くのモデルハウスを見学したり、建築屋さんたち
と接したりしましたが、
以上のような「バランス感覚」や「伝統的な家づくりの知恵」
を――片方でも――もっている人の数は寥々で、イメージを
売るか、セールストークに長けた人が圧倒的に多い、という
印象でした。
このブログに学んで、業界外の一般人が賢くならないと
いけませんね。
by 福智山 (2010-10-30 23:26)
福智山様
いつもお付き合いいただいて感謝申し上げます。
お礼が遅れてすみませんでした。
あの~、ちょっと褒めすぎですよぉ~(笑)
私はそんなに大したことを書いてるつもりはないんです。
でも、参考にしていただけたらほんとに嬉しいです。
おっしゃるように・・
>また、伝統的な家づくりの知恵、本当に、できるだけ多くの人に広まってほしいですね。
同感です。新工法にもいい点はいっぱいあると思いますが、
伝統的な家づくりの知恵も活かしてほしいです。
なんといいますか、目先の快適性よりも、やっぱりその土地の気候風土をよーく、見極めた上での新工法であってほしいと思います。
生意気言っちゃった(笑)
福智山様ご家族がいつもハッピーでありますように。
ほんとに好意的なコメントをありがとうございました。
by toyo (2010-11-01 23:44)