うつろな人間たち

ただね、僕がそれよりも更にうんざりさせられるのは、想像力を欠いた
人々だ。
Ｔ・Ｓ　エリオットのいう＜うつろな人間たち＞だ。　
その想像力の欠如した部分を、うつろな部分を、無感覚な藁くずで埋めて
塞いでいるくせに、自分ではそのことに気づかないで表を歩き回っている
人間だ。　そしてその無感覚さを、空疎な言葉を並べて、他人に無理に押し
つけようとする人間だ。　

ゲイだろうが、レズビアンだろうが、ストレートだろうが、フェミニストだろうが、
ハレ・クルシュナだろうが、そんなことはべつにどうだっていい。　
どんな旗を掲げていようが、僕はまったくかまいはしない。　
僕が我慢できないのはそういううつろな連中なんだ。

結局のところ、佐伯さんの幼なじみの恋人を殺してしまったのも、そういった
連中なんだ。　想像力を欠いた狭量さ、非寛容さ。　一人歩きするテーゼ、
空疎な用語、簒奪された理想、硬直したシステム。　僕にとってほんとに怖い
のはそういうものだ。

しかし想像力を欠いた狭量さや非寛容さは寄生虫と同じなんだ。　
宿主を変え、かたちを変えてどこまでもつづく。　そこに救いはない。　

ー新潮文庫「海辺のカフカ」村上春樹　Ｐ３８４～３８５　からの抜粋

皆さん、こんにちは。
今日はシロアリの話は止めにしますね。　
というのは昨日の「秋葉原　無差別7人殺害」というニュースに
ショックを受けたからです。　シロアリどころじゃないだろう、
なんて思ってしまいました。

で、最近、村上春樹の「海辺のカフカ」を読んでいたもので、
たまたまその中の一文を思い出してしまいました。　なんか符号する
ような気がして・・・。　

かなり前からこういう「通り魔」的な事件や校内暴力・・あるいは
いろんな事件を聞くたびに「想像力の欠如」した人間が増えている
気がしていました。　人間がもし他の動物達よりも優れている面が
あるとしたらこの「想像力」だけだと思います。　

実は先日、私の家の近くで猫が轢かれて死んでいました。　
それと知らない車が私の目の前で、再び死体を更に轢いて走り去って
いきました。　瞬間、ゴリッともゴソっともつかない音が。　
猫は目玉が飛び出してもう全身ミンチ状態。　なんともいえない苦い
感情に襲われました。　

あー、不快なシーンを書いてしまってすみません。　
でも、こういうシーンを見てもなんとも感じない人間が増えているの
ではないか、と危惧します。　想像力の欠如。　欠如。　欠如。
私達の社会はなぜこうなってしまったんでしょう？　

こういった事件がおきるたびにマスコミや識者あるいはコメンティター
といわれる人のいうことは決まっています。　
曰く「なにが彼をそうさせたか？」だって。　そして答えはムニャムニャ
で終わり、ハイ、つぎコマーシャルです、次は夏の味覚グルメの紹介
～っていう感じ。　
非日常的な事件と日常的な情報が並列で流されるＴＶ番組。　
もう参った、参った。　

・・・とりとめのない内容ですみません。　
皆さん、ごきげんよう・・・・。　

コメント 13

☆私もこのことについて昨日、議論してたのですが、
こういう犯罪をするヒトをまず、分析して、
どういう育ち方をしたのか？っていうのを
教えてもらって、そういう風に育てないようにする！
なんて、思ってしまったのですが、
難しいですよね。人間って。
by ijimari (2008-06-10 23:15) 

ijimari 様

想像力の欠如、つまり感情移入する能力のない人間は確実に増えていると思います。身近にもそういうタイプの人間をみつけることはそう難しくないほどに。
他者に思いを馳せる余裕もない社会というかシステム・・・こうなるともう社会革命しかないのか、という気さえしてしまいます。多かれ少なかれ皆がいつキレてもおかしくない社会が到来しています。対抗できるのは唯一、想像力・・・刺された者の身になれる想像力。差別された者の哀しみに思いを馳せられる想像力、感情移入力・・・なんて・・きりがないですね。
nice! ＆コメントありがとうございます。
by toyo (2008-06-11 00:03) 

toyoさん、おはようございます。
またまた、慌しくコメントとりあえずのコメントを書いて、今晩ゆっくりと・・・
by マルコメX (2008-06-11 06:35) 

毎日楽しみに読ませてもらっています。コメントご無沙汰でお邪魔します。先月初めにコメント書かせてもらったのですが、届かなかったようです。ITにうとくて。toyoさんのブログは「つまらない」とか書かれていると期待して読んでしまいます。シロアリの記事よりも面白いです。もっと自信を持って「つまらない」ブログを書いてください。秋葉原へは、もう30年くらいも前の学生の頃、何回か行ったことがある程度です。ですから、「あっあの場所だ」という身近な感はありません。社会が「効率化」を追っていくあまり、人とひとのかかわりが余りに無くなってしまいました。「契約社員」なる人を道具のようにしか思わない雇用形態。某防衛省幹部も言っていた「関係ねぇ」で終わる社会。etc.長くなると、また送れなくなるようなので、この辺にします。またお邪魔します。
by らっきょ (2008-06-11 07:35) 

らっきょ 様

＞社会が「効率化」を追っていくあまり、人とひとのかかわりが余りに無くなってしまいました。「契約社員」なる人を道具のようにしか思わない雇用形態。某防衛省幹部も言っていた「関係ねぇ」で終わる社会。

おっしゃるとうりだと思います。そういった社会のシステムの変容が確実に人間関係の「悪化」をもたらしていると思います。またＣＧ等の映像関係の進歩も私達の想像力を阻害するのに関係してるとも思います。

ただ、そういったシステムに組み込まれている人たちの中でも「他者への傷みの想像力」を持ち合わせている人と、そうでない人がいます。この差はなんなのか？幼少時の情操教育（教育ってことばは好きではないですが）が決定的に作用している気がするのですが、らっきょ様はどう思われますか？平たく言えばＴＶを消してもっともっと本を読みましょう、と私は言いたいです。きりがないのでこのへんで・・・。
ていねいなコメントありがとうございます。

by toyo (2008-06-11 08:11) 

今日＾＾秋葉原の現場を通ってきました＾＾　報道と警察官の姿はありましたが＾＾思いのほか平然としていました・・・
たしかに　大変な事件です、　ショッキングでもあります。

村上氏からの引用のような　想像力を　あえて考えるなら
非常識もしくは乱暴と　思われるかもしれませんが・・
交通事故　薬害　貧困　殺人なのに行方不明扱いで立件されない事件　それから　食物汚染　もっと　いろんなこと・・・

今回の事件よりも　はるかに多くの人間が命を落としている・・　そんな社会にこそ目をむけるべきかな？なんて　思います。

不幸な事故でなくなられた方々のご冥福をお祈りします＾＾
by denn (2008-06-11 12:49) 

denn 様

＞今回の事件よりも　はるかに多くの人間が命を落としている・・　そんな社会にこそ目をむけるべきかな

まったく、おっしゃるとうりだと思います。
（denn 様も、お気づきのようですが、引用した村上氏の文意と、今回の事件に関連をもたせるのはちょっと不適切だったと途中で私も思いました。）

たしかに今回の事件よりもっと悲惨で救いのない状況は世界にあふれています。それに対して一体自分はなにができるのか？と問うと、どうしようもない無力感に襲われてしまいます。もう頭の悪い自分には思考がついてゆけない、というのが正直な気持ちです。

それと、うまく言えませんが・・・
＞思いのほか平然としていました・・・
・・・って、何かとても印象的な光景ですね。惨劇と何事もなかったように流れる時間と青い空・・・その落差・・やっぱりうまくいえません。

nice!とコメント、ほんとに有難うございました。
by toyo (2008-06-11 19:38) 

たいせい様
nice! ありがとうございます。
今度、この事件についてたいせい様の意見もブログで取り上げていただければ、と思います。皆さん、いろんな意見をお持ちだとおもいますので。
いろんな意見を出し合うことで少しでも現状を変えてゆければ・・・と思います。
by toyo (2008-06-11 19:44) 

らっきょ様から以下のコメントをいただきました。
投稿しても認証確認がうまくいかないということで直接メールでいただきました。せっかくですので皆様に紹介させていただきますね。らっきょ様、有難うございます。

らっきょです。
ブログで何度打ち込んでも認証確認してもらえず、
直接メールします。
ご容赦下さい。

toyoさんも仕事でお疲れのところ、稚拙なコメントの早急な返信ありがとうございま
す。「相手の気持ちになり痛みを知る。」「ひとの嫌がること、迷惑なことはしな
い。」「人が喜ぶようなことをする。」私たちはそう教わってきたのではないでしょ
うか。「想像力」は社会生活にとって重要なこと。いや、そういう社会は終わってし
まったのではないか。と思われてなりません。「正直者は馬鹿を見る。」「いい人と
ばか者は同義語。」の社会のように思われてなりません。悲しいことです。周りに悪
いやつだけの中で、ひとり正義の味方をがんばっていても無益な、いや不利なだけで
す。極端に言うと、今のテレビは確実に馬鹿をつくり、増幅させていきます。いじめ
る役と、いじめられる役があり、薄い笑いだけで、芸だと思っている、思わされいる
芸人たち。斜に構えて、情報を自分の中に入れない用にできればよいのですが、子供
たちにそれができるかどうか。長くなるのでこの辺で。
by toyo (2008-06-11 19:55) 

ヤッパリ、想像力の無い大人が増えているんでしょうね。
でも、子供の将来を考えて教育するのって難しいと思います。
とりあえず、学業成績重視の社会を変えないと…
by こう (2008-06-16 08:57) 

toyoさん、遅まきながら。

世の中全体（というか、テレビ、新聞、ラジオなどなど）の雰囲気が、やたらに一方的で暴力的に見るものに押し付けてくる感じが、子どもの頃から基本的に嫌いだったんです。
でも、テレビっ子ですから知らない間に、押し付けがましい暴力的な立ち居振る舞いに染まってしまうわけで。
マスメディアへの論評は様々あれど、離れてしまえばワリカシ平安に暮せます。とりあえず、ウェブで事実だけを知ろうとしている今日この頃。
そうすると、秋葉原の凄惨な事件も、「あいつは異常だ」という視点だけで終わることなく、いろいろと自分で考えることができるし。

ただやはり、右へ倣えの論調だけではない、「まともだ！」と感じさせるマスコミ論壇の登場を待ってはいますが。
by マルコメX (2008-06-16 21:50) 

こう 様
コメント有難うございます。
個人としての想像力の欠如した人間が増えているのと、
更にそれを助長させ加速させる社会システムの両面から変えていかないとダメな気がしますが・・・おっしゃるような「学業成績重視の社会を変えないと」というのも重要な要素ですよね。まあメゲないで自分のできることからやっていくしかないのかなあ・・なんて思っています。お互いがんばりましょう。
nice! 有難うございます。
by toyo (2008-06-16 22:15) 

マルコメX 様
コメント有難うございます。
今回の事件に対して潜在的に違和感をもたない層がかなり前からジワジワと増えている気がしていました。　それについていろいろ言うことはできますが、では自分はどうなのだと振り返ってみると、自分の中にも「なにか投げやりな闇」みたいなものがあることに気づきます。
電信柱が高いのも〒ポストが赤いのもみんな私が悪いのよ・・ではないですが・・・何を書いているんだろう？私は。
とにかく自分の心にも砂漠があるのに気づいた次第です。
まず自分からもっとリリカルな心を取り戻さなくっちゃ・・なんて思っています。わけわかんないこと書いてすみません。でもマルコメ様ならなんとなく判ってくれるかなあ・・と思ったもので。
nice! 有難うございます。



by toyo (2008-06-16 22:28)